日本の報道番組見ていていると、つくづくマスコミの底の浅さを感じることが多い。
その場その場の流行の事件をだけを追いかけ、事件や現象の表面を撫でているにすぎない内容。
猟奇的な事件が起これば、犯人の深層心理をお得意の『心の闇』の一言で終わらせるというマニュアルな対応。
この事件結局どうなったんだろうか?と思うことしばしば。
目の前の出来事に対応しているだけということが、この浅さとなっているのが現状だと思う。
この映画のフロストは、そういう意味ではその時最も話題性のある獲物の飛びついたにすぎないけれど、、一般のマスコミと違う所は人生をかけてそれに挑んだこと!
そして、、相手ニクソンも人生をかけてそれに挑んできていること!だからこそこのドラマ!
結果を知っていても最後まで見入ってしまった!
【ストーリー】1974年8月9日、第37代アメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)が、ウォーターゲート事件の汚名にまみれて辞職。その光景をテレビで見ていたトーク番組の人気司会者デビッド・フロスト(マイケル・シーン)は、ニクソンに対する単独インタビューを企画。ニクソンの代理人にコンタクトを取る。(シネマトゥディ)
『これは真実の物語』といった作品は最近多く、また宣伝もその事が素晴らしいというような形のものが多い。
でも、真実を映画化したから素晴らしいのではなく、映画として重要なのは真実の出来事をどう切り取り表現するかという事だと思う
この部分を失敗してただ事象をなぞっただけの内容だと深みも何もなくつまらないものになってしまうもの。
実話をもとにした作品というのは、ラストが見る前から分かっているだけにいかにそのラストにいくまでの状況をどう魅せるかが重要になってくるのは仕方がないこと。
その点コチラの作品は見事に二人も男の生き様とバトルをしっかりみせることで成功していたと思う。
この映画で題材になっているのは、ニクソンが公式に自分の罪を認めたということでアメリカで史上最高の視聴率をはじき出した伝説のインタビュー番組。
そのことだけでもドラマチックな内容ではあるもののそれだけに頼らず、ドキュメント風なノリの中でしっかりフロストとニクソンの人となりと、男と男の戦いをシッカリ見せたことで見応えのあるものとなっていた。
汚職により引退を余儀なくされた大統領ニクソンはアメリカでも1・2を争う悪名高き大統領、それに対するのは決して正義に燃えた男ではなく野心に燃えたコメディアン出身のトーク番組の司会者フロスト。
ニクソン大統領を映画で表現するとなると、時代劇の越後屋のようなしたたかな悪の親分な扱いにされそうな所ですが、鋭い洞察力と巧みな政治家らしい話術を持つと同時にやさしさとか弱さとかいった面までも見せ人間臭い人物。
フロストもイギリス人らしいシニカルさとそして軽さと陽気さという業界人らしい見かけと性格、御しやすいようにみえて実はインテリで強かな人物として描き、生きた二人が対決するからこそ面白くなっています。
フロストも正義感とか真実を世間の人にしっかり伝えるためとかいった大義のために動いているのではなく、自己顕示欲の為!そしてニクソンはこのインタビューを利用して汚名挽回しその勢いで政界復帰を狙ている状況。
このインタビューを成功させることで世間でやや落ち初めている気味の立場を一気に押し上げるステップにするつもりで、莫大な借金を背負いこのプロジェクトを立ち上げます。
ニクソンはフロストの意図を知りつつも、自分ならフロストを御せると読み、しかもフロストが借金まで作り用意した高額の出演料もありそれをうけフロストを利用して政権復帰を図ろうと企んでいくわけです。
もしフロストがニクソンに罪を認める発言を引き出せれば、その後TV界で栄光の未来が開けるものの、失敗したら莫大の借金を抱えるだけでなく無能な男として失業の危機を抱え悲惨なな未来が待っている。
逆にニクソンがフロストのインタビューを上手く煙に巻きそれによって汚名挽回できたら政権復帰の道がひらけ、失敗したら罪人として国中から指をさされる敗者の未来がまっているだけ。
人生の瀬戸際に立った二人の男のバトル!しかもフロストからしてみたら巨大な敵に立ち向かい圧倒され続けながら最後の最後に突破口を見出し勝利を収める!そのドラマチックな流れが見ている観客をグイグイ惹きつけて見入ってしまった。
勝者となったフロストが格好よく見えるのは当たり前なのですが、ニクソンがここまで味わいのある穏やかな魅力と大統領まで上り詰めただけはある貫禄をもった人物で格好よくみせたのが、この作品の魅力を増したように感じた。
派手さはないかもしれないけれど、面白い映画だった。
【オオブタさんの一言】睡眠不足な状態でみても全く眠くならなかった。

評価 ★★★☆☆
監督・製作 ロン・ハワード
脚本・原作・製作総指揮 ピーター・モーガン
出演 マイケル・シーン
フランク・ランジェラ
ケヴィン・ベーコン
レベッカ・ホール
トビー・ジョーンズ
マシュー・マクファディン
オリヴァー・プラット
サム・ロックウェル

この記事に対するコメント