この映画の設定を聞いたときに
『昔々のついさっき。 今日は朝から夜だった。どんより曇った日本晴れ。
産まれたばかりの爺さんが85・6の孫連れて。浅い底なし沼に落っこちた。
それを見ていたのっぺらぼう、慌ててツンボに電話した。
黒い白馬に乗った警官が、一人でぞろぞろやってきた。』
(注:当時流行ったままの言葉で載せているので、一部不適切な表現があります)
という昔流行ったこの文章が、ふと頭に浮かんでしまったのは私だけでしょうか?
ネットで調べたら、これって地域や世代でによってバージョンがあり、お爺さんがお婆さんになっていたり、孫の年齢が違っていたり 落ちたのが『海から崖』だったり、『谷から山』だったり、駆けつけた警官が『前へ前へバックした』り とその後の展開も変わっていたりします。
でもそれらに共通するのは、真逆の意味をもつ言葉を繋げることでのあり得ない状況。
でも、この映画はこの文章のように『CURIOUS CASE(不思議な状況)』を描いているようで、人生の不変的な理を説いたものです。
【ストーリー】80代の男性として誕生し、そこから徐々に若返っていく運命のもとに生まれた男ベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)。時間の流れを止められず、誰とも違う数奇な人生を歩まなくてはならない彼は、愛する人との出会いと別れを経験し、人生の喜びや死の悲しみを知りながら、時間を刻んでいくが……。(シネマトゥディ)
見ていてなんとも不思議な空気をもった作品でした。
数奇な人生を歩まざる得なくなったベンジャミンを哀れむ物語でもないし、数奇な人生を歩むことになったベンジャミンの人生をドラマチックに描きそれを楽ししませるものでもなく、『長くても短くても、またまた肉体が逆に成長していたとしても人間にとって人生ってこんなもの!』というのを描いた物語。
主人公となるベンジャミンの人生は、老人で生まれ肉体は若返りを止めることもなく続けていくという事で数奇に見えるのですが、あくまでもそれは一つの特徴でしかなく、彼自身が生きた人生というのは母周囲の人の愛に包まれて少年期、性的興味をもち愛を覚える青年期、家族との関係に改めて向き合い結婚し家族から離れていく中年期、精神的に老化していく老年期と実は普通の人と何ら変わらない人生を歩んでいるんですよね。
肉体年齢は若返っていくものの、特別な人間ではなく精神の年齢は普通の人と変わらず成長し老けていくそうすることで、老年、壮年 中年、青年、少年、幼児期というものが人間にとって何だったのかを改めて見ている側に考えさせてくれます。
一般的に、老いは物悲しいもので、若いは輝かしいものと思われがちですが、この作品ではその両者が進化も退化も同様の人間における変化にしかすぎず無から始まって積み上げていったものを一つづつ失い無に戻っていくものです。
老いも成長ものその流れの一つにしか過ぎないんですよね。
無から始まり人と出会い様々な物を学び積み上げていき、それらを一つずつ失って無となっていくのが人生というもの。
ベンジャミンの体質はあり得ないというより、常人の10倍の速さで老化するプロジェリア患者に近い感覚で見ることができ、人生とは若さとは老いるとは何なんだろうというのを考えてしまいます。
表現もクールながらにレトロで穏やかなムードにしたことで、静かに観る側に世界は入っていけるようにしているんですよね。
最近のフィンチャーって、前のようなエキセントリックな派手さで決めてくるのではなく、落ち着いた淑やかな深さも出してくるようになりましたよね。
心に いい感じに沁みた映画でした!
【オオブタさんの一言】最近のフィンチャー作品 外していただけに再び面白い作品に出会えて嬉しい。
3時間近い映画を静かに描いているのに、まったく退屈させない映像と物語。
この物語って、数奇な人生を描いているようで、生まれ人と出会い成長しそして忘却していく実は普通の人となんら変わらない人生なんですよね。
一人の人間の人生の肉体だけを逆に表現していくことだけ、でもだからこそ人生というものを考えさせられる。
若いというのは素敵な事に思えるけれど、脳トレのゲームで脳年齢を調べられるけれど、、あれでもし「貴方の脳年齢は13歳です」といわれても、、嬉しくはないよね、、
↓この映画にたいして こんなふざけたイラスト描いていたことをちょっと後悔、、


この記事に対するコメント
はらやんさんへ
はい 本当に新しいフィンチャーワールド堪能させてもらったという感じですよね~
まさに円熟 ピッタリな言葉で(^^)
溜め息が思わずでてしまう映画でした。
こんばんは
コブタさん、こんばんは!
フィンチャー監督、新境地という感じでしたよね。
今までは個性ある画作りという側面が強かったですけれど、前作から物語に引き込んでいく感じがさらに強まったような気がします。
まさに円熟といった感じですね。
piyopenさんへ ノラネコさんへ
piyopenさんへ
本当に3時間を感じさせない作品でしたよね~
あの ティーンのブラビの顔には驚いてしまいました!
でもたしかにケイトブランシェットって、不思議な魅力と美しさをもった女優さんですよね。
なんか神秘的な雰囲気もあり私も大好きな女優さんだけあって、今回堪能できて幸せでした(^^)
ノラネコさんへ
コメントありがとうございます!
おおおお ノラネコさんもこの文章ご存じでしたか。
本当にこの言葉って何なのでしょうね。
この映画私のツボにもはまった作品でした!
流石、フィンチャーという感じで!見て嬉しかったです!
ああ、ありましたね、、そんな昔唄みたいなの。
元々の出典はなんだったんでしょうか。
普通の世界をほんの少しだけ違った角度から見る事で、人生の真実を浮かび上がらせる、という手法はある意味ハリウッドの王道だと思います。
フィンチャーの流れるような映像テクニックもあり、大河にたゆたうようなあっという間の3時間。
個人的にはツボにはまった映画でした。
こんばんは♪
3時間弱プラピを堪能する作品でしたね~
若かりし頃の輝きを取り戻した10代位が凄かったです♪
ただ好みのタイプじゃないこともあり、それほどノリキレなくてちょっと残念でした(^_^;)
その代わりと言っちゃあなんですが、
ケイト・ブランシェットの美しさは格別で
驚異的なアンチエイジング技術が羨ましかったです(*^_^*)
マサルさんへ
コメントありがとうございます!
本当に3時間近くあるのに、それをまったく感んじさせず世界にぐぐっとはいってしまうそんな映画でしたよね!
たしかに自分や周囲の変化それをどう受け入れていくかというのも考えさせられる映画でしたよね。
これは逆に若い人はイマイチピンとこないかもしれませんが、少年 青年 中年 壮年 老年とそれぞれの時代に見てその違いも楽しんでみたいと思いました。
私は川崎の109でしたが、、オオブタさんの後ろの人が何故か椅子をボンボン蹴る人で、、オオブタさんその人のせいで終始イライラしっぱなしになり、、可哀想でした。
こういうしっかり見たい映画って、、やはり平日か 初回でみるべきなのでしょうかね~それだと比較的マナーの悪いお客様少ないので、、
それからTBってなんか相性ありますよね。
FC2って、何故かFC2同士でもつかなかったりというくらい難しいときがあるんですよね(TT)
お手数おかけしてしまってすいません。
これで 見捨てず、また遊びにきてくださいね(><)!
私もこの映画、満足度高めでした。特にストーリー上の大きな盛り上がりがあるわけでも、ラストの大どんでん返しがあるわけでもないのに、3時間弱という長時間、ずっとスクリーンに釘付け状態でした。
私は自分のブログに書いた通り、「必ず変わってしまうものを受け入れざるをえない哀しみ」がぐっと胸に突き刺さってきました。おそらく観る時期(人生の年代)によっても感想が違ってくる気がしますね。20年前、死や老いなど現実のものと考えてなかったころなら退屈したかも知れないし、20年後ならまた違った哀しみや、もしかすると安堵のようなものを感じることができるかも..と思ったりもしました。
初回の六本木だったこともあって満席で、(お酒を呑んでる人が多いせいか)イビキを書いて寝てる人がいたり、途中で立ち歩いたりする人がいたりして、その辺が残念でしたが。もっとガラガラの映画館で観れば良かったかな。(^^;
# スミマセン、トラックバックしてるつもりなんですが、どうにもコブタさんのところだけうまくいってないようです..。m(__)m