Date:2008/10/09 20:22
新婚旅行で訪れたスペイン。
その時美術館でゴヤの絵を生で拝見したのですが、そのモチーフと凄みのあるタッチを観ていて胸を掴まれるようななんともいえない気分になったものです。
この映画、まさそのゴヤの絵画を目の前にしたときの感情を、そのまま再現させてくれました。
【ストーリー】18世紀末スペイン、ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は国王カルロス4世(ランディ・クエイド)の宮廷画家に任命される一方、権力や社会を批判する絵画も描いていた。ある日、彼のミューズであるイネス(ナタリー・ポートマン)が、ロレンソ神父(ハビエル・バルデム)が指揮する異端審問所にとらわれてしまう。そして彼女を救おうとしたゴヤが見たものとは……。(シネマトゥディ)
ミロス・フォアマン監督の作品であるアマデウスもそうでしたが、題材となっているのは有名なアーチストあったり、聖職者であっり、王族であったりと当別な人物を題材されているようで、出てくる人物が偉大さでもなく、性格的には特殊でもなくこれ以上なく人間臭い。ここが凄さであり怖さであろ悲しさであるように思います。
時にコチラの作品、登場人物それぞれが、その時代の中や生活の中から育んだ信念をもって行動し、その近藤の連鎖が悲劇を作り出していきます。
とにかく人物描写が素晴らしです
この映画の世界は、近代に移りかわることで、科学や技術がすすみはじめ、新しい思想が生まれだし、王立制度、宗教的思想との対立をみせ権力をもつものが激しく変わりあらゆるものが激しく揺れ動いていく時代。
その時代に人間一人の力なんて弱いもの。
弱いからこそ、自己愛ではなく彼なりの信念をもつことで時代を生き抜こうとするロレンソ、そんな時代に無心に愛にすがり生きようとするイネス、自分が出来ること出来ないことを冷静に阪大し時代の記録者として傍観するゴヤ。
自ら異端審問を率先して運動を起こし、哀れなイネスを救うどころか性的関係をもち子供を作り、そして逃亡し自由主義をひっさげて再び権力の地位に返り咲き、再会したイネスと子供を見放そうとするロレンソ 一見、非情で狡い男と思われるのですが決して冷徹なわけではないんですよね。
彼は自分が頼るべき価値観と信念を持つことで、時代を乗り越えていこうとしただけ。
自己顕示欲はあるものの彼が神父になったのも彼なりの固い信仰心からくることで、そしてイネスの存在に出会うことで、彼の信念であった信仰をいろんな意味で壊されてしまいます。そして全てを失ったか彼がフランスで自由主義という自分が新たに生きるべき信念をもち、生まれ変わった気持ちでスペインに戻ってきます。しかしまっていたのは、彼の人生の罪の証明であるイネスという存在。
だからこそ、彼がイネスとその子供の存在に怯え、遠下げようとします。
一方愛情溢れた家庭で育ったイネスは、愛だけが彼女の支え。全てを失い牢にいる彼女にとって、それが歪んだ愛情であったにせよロレンソの行動は勇逸の救いの光。そして牢を出て家族の死を知った彼女はひたすらロレンソと彼との子供を追い求めることのみが生きる糧にします。
一見狂気による異常な行動なようですが、それは人間にある普遍的な家族愛という感情。
形は違うにせよ時代に翻弄され真逆の人生を生きた二人、シンクロしつつも交わることのない二人。
揺らぎつつある時代の価値観に身を投じた男と、動物が根底的にもっている愛を追い求めた女、どちらがより弱い人間だったのか?
ラスト手をつなぎ道を行くロレンソとイネスの姿をみて考えてしまいました。

評価 ★★★★☆
監督・脚本 ミロス・フォアマン
出演 ハビエル・バルデム
ナタリー・ポートマン
ステラン・スカルスガルド
ランディ・クエイド


この記事に対するコメント
SGA屋伍一さんへ
コメントありがとうございます(^^)
>コブタさんはけっこうロレンソに同情的ですね。
好意的(’’なのでしょうか、、
私には、ロレンソが残忍で卑怯な男とは思えなかったんですよね。
むしろとても人間臭く見えてしまい、だからこその悲劇のように思えてしまいました。
アマデウス、、たしかにモーツアルトはいろんな意味で印象深い作品ですよね。
また、あの笑い声も、、観てからかなりたつのに、、未だに耳にのこっています(--;
素人落書き屋ボクも見た
こんにちは
>弱いからこそ、自己愛ではなく彼なりの信念をもつことで時代を生き抜こうとするロレンソ
うーん、こう書かれるとあのよだれブクブク垂らしてたロレンソでさえかっこよく思えてくるから不思議です。
コブタさんはけっこうロレンソに同情的ですね。人間の弱さを体現したようなキャラクターでしたが、最後にああいう決断をしたのはいかなる理由だったんでしょう。ダメ男のなけなしのプライドだったんでしょうか
『アマデウス』はモーツアルトがおならをぶっ放すシーンが忘れられません
swallow tail さんへ なるはさんへ
swallow tailさんへ
おおお 私の心の声の4.5というのを察して下さいましたか!
本当に素晴らしい作品でした!
本当にメインとなった3人の演技が素晴らしかったです!
この役ハビエルさんがやってなかったら 結構極悪人にもとられそうな役ですよね、それをここまで人間臭くみせるとは流石です!
それに、ノーカントリーのときは格好良いとも思わなかったのに、コチラではいい男にも見えましたよね~
なるはさんへ
コメントありがとうございます!
本当にフォアマン監督は人間を描くのが上手い方ですよね~
コチラも思わず唸ってしまうほどの、人物描写でした。
見終わったあと感んじる感情が、悲しいとか切ないのか怒りなのかどういったものなのかを表現するのすら困ってしまうほど衝撃をうけてしまいました。
これはお勧めです!
こんにちは。
この作品気になっていました。
『アマデウス』が5本の指に入るくらい好きなんですが、
つい最近同監督の『ラリー・フリント』という映画も観て、
ある人間の人生を描き、
その人物をとことん掘り下げるのが上手い監督だなと
改めて感服しました。
コブタさんの評価も高いので、
安心して観れそうですv
おぉ~
コブタさん、こんばんは。
コブタさん、出ましたね!?
★4.5とはかなりの高評価ですね!!
スワロも4にしようか5にしようかすごく迷いました。
結局は4にしましたが、もしかしたら今年のベストに食い込むかもしれませんね~。
脚本も素晴らしかったけど、ハビエルの演技もさすがでした。
も~あんな演技ができるだなんて、彼ってやっぱりスゴイのねっっ!
睦月 さんへ
フォアマン、、本当の流石です!
映画というキャンパスで見事な脚本と役者という絵の具でもってゴヤの絵を作り出したという感じですよね!
そうそうゴヤの方、ウィルのパパなんですよね!
いい味を出すのが上手な方ですよね!
本当はゴヤはバルデムさんが演じる予定だったようですが、ロレンソという役が脚本に生まれた段階で惚れ込んでそちらに替えてもらったそうです。
バルデムのゴヤも観てみたいですが、やはり、ゴヤはウィルパパで、ロレンソさんがバルデムさんで成功だったなと思いました
こんにちわ
さすがフォアマン!といった1作でした。
明るく前向きな内容ではなく、とことん
重くやるせない物語で、観終ったあと
なんとも形容しがたい余韻に、すっかり
打ちひしがれてしまいましたけれど(涙)
確実な演技力を持つキャスト陣の共演が
とっても光っておりました。
ゴヤ役の人って、フジツボメイクのあの人
・・・ウィルのパパ役だった人なんですねー。
最初、全然気づきませんでした(苦笑)