『許せますか、彼女の”選択” これが彼女の答え。』というコピーのこの作品。
ジョディ・フォスター演じるヒロインエリカの『選択』よりも、ラストテレンス・ハワード演じる刑事マーサーの選択を容認できるかどうかで、この映画の評価は分かれると思う。
映画自身は出来もよく面白いと思うけど、コブタ自信はこのラストについて納得がいかずモヤモヤとしたものを残してしまった。
(以下ネタバレ部分は 白で表記しています。 鑑賞された方、ネタバレしても構わない方は反転して見てください。)
この作品、犯罪被害者となった女性が、その恐怖と苦悩から死刑を始めるという物語。
脚本もご都合主義な部分はあるもののよく出来ていて、ヒロインの深い哀しみと苦悩と葛藤を描いていて、彼女の苦しみを素直に観客も感んじることができ、彼女がどうなっていくのかというのをハラハラしながら見守って行く感じに作られている。
ヒロインのエリカが犯罪に手を染めていく様子も、
犯罪被害者となり心に傷を追った彼女が自衛のために銃を持ち、そして再び死の局面にたち彼女は自らを守る為に引き金をひき、たまたま居合わせて目撃した犯罪者を処刑し、自ら犯罪者を捜すようになると、、段階を経て積極的に行為を行うようになる彼女と、その行動をする自分自身に恐怖し悩みを深めて行く様子が丁寧に描かれている。決して彼女自身は人を殺すことに対して快楽を感んじるとかいうのではなく、心の奥底にある恐怖や言葉にもならない怒りに突き動かされて犯罪を続けていくものの、その反面で誰かに自分を止めてもらうことを願っている。
そんな彼女エリカに対峙するのが善良なる刑事マーサー
不条理で正義通用する甘い世の中ではないことを自覚しつつも、自らは正義の存在であろうとする法の番人である刑事。
犯罪被害者でその癒されぬ哀しみと痛みから非合法で処刑人を行っていくエリカとは、相反する立場のようでいて、二人は共に善良なるまっとうな人間的な神経をもった善意の人で、不条理な世界を冷静にみて理解してその中で生きていこうとしている。
エリカがそのマーサーの冷静に正義を追い求める姿に惹かれ心の拠り所にしていくように、マーサーもエリカを疑いつつも事件と向き合いながら必死足掻いている様子に心引かれて、両者は刑事と犯人という決して交われぬ平行線を辿りながら、不思議な形で友情を深めていく。
その関係が本当に素晴らしいだけに、ラストの展開が残念!!。
エリカがマーサーに求めた救いってこういう形だったのではないのでは?というのが不満の最大の不満の原因。
この映画自身は、エリカの行動を肯定はしていない。
エリカのラジオ番組のリスナーの言葉を借りて様々な意見をだしてみせ、彼女の行動はイラクでのアメリカの行動と同じで感情的なものでしかなく何の解決にもなっていないと示し、彼女自身も自分の行動を決して正義の行動とは思っておらず誰かに止めてもらうことを切に願っている。
それだけに何故この形にラストをもっていったのが理解できない。
エリカの行っている行為に気がついている人物はマーサーの他にもう一人いて、その人物はの女性は彼女を告発するのはなく見守りつつ彼女が正しい路へと戻るように促していて、ここに正義と悪とは別に彼女の立場を理解していて彼女が正しき道へいけるように促す人物が存在している。
だからこそ、本当の意味での正義の象徴であるマーサーまでが、彼女へと歩み寄る必要があったのだろうか?
マーサーは本当の意味での正義を貫きとおして、間違えた道へと進んでしまったエリカを止めてもらいたかったです。そういう現実を見せてから、彼女の行動がどうだったのかを観客に投げかけてほしかった。

似たように、犯罪者を警察ではない人物が個人的に裁くという映画「処刑人」というものがありますが、こちらはテーマは同じでもエンターテーメント性が高く、派手でオチョクッた内容だけにああいうラストは許されると思うのですが、コチラのような映画のノリでこういうラストにされると違和感を感じてしまうのはコブタだけではないかと思う。
評価 ★★★☆☆
監督 ニール・ジョーダン
出演 ジョディ・フォスター
テレンス・ハワード
ナヴィーン・アンドリュース
メアリー・スティーンバージェン
ニッキー・カット
ジェーン・アダムス


この記事に対するコメント
ノラネコさんへ
このラスト、、うーんでしたよね、、・
ニール・ジョーダン大好きな監督だけにアイルランドに帰られても悲しいのですが、、ある意味ハリウッドでよりヨーロッパで映画を撮るほうが向いていると思ったりもしますが。
こんばんは
力作ではあるのですが、何となく噛合ってない感がありました。
とりあえず、あのラストは無いだろうと(笑
ニール・ジョーダン、また臍まげてアイルランドに帰っちゃわなければ良いですけど。
睦月さんへ mottiさんへ
睦月さんへ
やはり あのラスト納得はできないですよね~
ニール・ジョーダン 監督、基本的にヒロインを不幸のままにしておけない監督なので、、ああなってしまったのでしょうね~
でも今回は物語が物語だけにしっかりケリをつけてもらいたかったなと思ってしまいました。
mottiさんへ
途中までは本当に素晴らしかったですよね!
久しぶりに光っているジョディ・フォスターの演技をみた感じがしました!
それだけにこのラストは残念と言わざるえないです。
コブタさんこんにちは。
昨日みてきましたコレ。
非常に引き込まれ見ていて、こりゃあいい映画だと信じて見入ってしまい、こうなったら彼女は最後死んじゃうのかな?とかドキドキしてみてましたが、あのラスト、やはり僕も「唐突」な感じがしました。
4ッ★届かず...って感じでしたね。
こんにちわ
全体的にかなりシビアでへヴィーなムードを一貫しているにも関わらず、あのラストだけは『映画的ご都合主義』なものに成り下がっているなあという印象を受けちゃいました。
とても考えさせられる物語なのに、観終ってみると、思ったほどの余韻が残らなかった・・・うーん、何でだろう?