コブタを以前唸らせ興奮させた、酒見賢一の「墨攻」が映画化になるということで、不安半分期待半分で観に行ってきました。
映画の物語は、趙と燕の大国に挟まれた位置にあることから、それぞれが戦いをするにあたり軍事的に重要な場所にあったため滅亡の危機にあった梁城は、今名将巷淹中率いる10万(原作では4万人だったとおもいますが)の趙軍に攻められんとしているとき、梁城に城救うためにやってきたのは墨家の革離ただ一人。彼は梁城にいる全住民4000人の兵を率いて城を守るための戦いを始めることになるが、、。
こちらの映画は 小説だけでなくそれに脚色して描かれた森秀樹さんによる漫画も含めて原作とした内容のものとしていますが、漫画は読んでないのでわかりませんが、原作とはまったくの別ものになっています。
この作品の魅力は、原作150頁の長さに関わらずグイグイと引きこまれてしまう物語自身の面白さにくわえ、兼愛・反戦を説き墨子が築き、非攻を問いあらゆる手段をつかって城を守り攻撃することの愚かさを実践して説いた墨家という存在感になるのですが、この映画と原作、物語の始まる設定は敵4万人味方4500人と映画はかなりスケールアップされてますが、物語の発端となる状況はほぼ同じなものの、主人公の性格の違いにより随分原作と違ったテイストのものを作り出したものだなというのが素直な感想でした。
原作は、とにかく墨家の革離一人の人物を前面に描き、それが腐敗した墨家、腐敗した政治下の梁城においても、自らの信念のもとに戦っていく生き様を描いていたのですが、職人気質で戦うことにおいては悩みをみせない原作とは異なり、理想に燃え信念をもって行動するものの現実とのギャップに戸惑い悩む若く人間くさい革離となっていて、どちらの物語を好むかは人によって分かれるのかもしれませんが、原作のほうが好きではあるものの、これはコレで楽しめます。
こちらの作品、革離に恋愛要素といった分かり易いよけいな要素なども入っているのですが、決してラストまでみてもらうと分かると思うのですが、物語を分かり易くしているものの、決して甘い世界ではないんですよね、ハリウッドではまずみられないタイプの見る側になんとも釈然とさせない気持ちと空しさを残す終わり方をします。
そういう意味でも好きか嫌いかは分かれると思いますが、原作をまったく知らないオオブタさんも満足していたみたいですし、戦闘の様子はややわかりにくい部分はあるものの戦術といった要素も楽しく物語りがどうなっていくんだろうかというという緊張感もあり魅せる映画にはなっていたと思います。
最初 アンディー・ラウが革離をするを聞いたとき、イメージとあまりにもかけ離れていたことで違和感を感じまくっていたのですが、この映画の設定の革離なら彼が選ばれてというのも納得できました。
しかし国王直属の女騎馬隊長逸悦を演じるファン・ビンビン、戦士というにはあまりにも可愛らしすぎて、勇ましさとかりりしさといったものがあまり感じられず、物語全体を軽くしてしまったように感じました。
途中やや物語が停滞するなど、部分部分には、気になる部分があるものの全体としては楽しめる作品でしたし、正義悪はなくただ戦争の愚かさを描いたこの作品のテーマ 今の時代にも何か通じるものがあったように感じます。
評価 ★★★☆☆
監督 ジェイコブ・チャン
出演 アンディ・ラウ
アン・ソンギ
ワン・チーウェン
ファン・ビンビン
ウー・チーロン
チェ・シウォン





この記事に対するコメント
睦月さんへ
あら 吹き替えってことは 別の型がされていたんですか?
壮大なイメージのコピーや予告編だけに、内容がおっやるとおり こじんまりしていたのがきになりますよね!
脚本は 悪くはなんですがね 原作は面白いですよ!!
酒見さんの作品って コブタけっこうすきなんです^^
こんにちわ!
TB&コメントありがとうございます!
アンディ・ラウは全編吹き替えだったらしいですね。それを知って驚きました!
反戦へのメッセージ的なものを訴えた作品としてはなかなかに良かった気はするのですが、どうもこじんまりとした印象がぬぐえず、あと一歩という感じも受けました(苦笑)。
でも、ラウさん、素敵でしたね♪原作の方もすごく気になります!
隣の評論家さんへ 二純さんへ aiさんへ
隣の評論家さんへ
原作(小説)ファンとしては、やや不満は感んじる部分はありましたが、これはこれで面白かったと思います。アン・ソンギさんも渋くいい演技していましたよね。
信念をもち生き続けた男の生き様をみせてくれていましたよね!
やはり、才能に加え、複数の語学にチャレンジし新たなる活躍の場を求めていく俳優さんて、それだけの覚悟と強さを感んじる演技をされますよね!!
二純さんへ
たしかに この映画ができあがっていく経過は、面白いところがありますよね。
それぞれの文化がいい意味で、お互いの良さを感じあいながらキャッチボールをしあって出来た感じですよね!
今、この時代に墨攻のテーマって色々考えさせられるものがありますよね!
aiさんへ
たしかに戦術としては、部分部分で小手先な部分では表現していたのですが、全体の流れとしての攻防の素晴らしさといったものは感じられませんでしたよね。
それよりも、テーマは戦うことの空しさを描いたものだったのでそちらを描くことに集中してしまった部分もあるのでしょうね。
凄い面白かったし、テーマも深く心に響いたのですが、、もっともっと面白くもできたのでは?と思わせるところがあるのが残念でした。
戦争映画に通じるもの
この作品も、昔の戦さを題材にしながらもやっぱり「戦争」の虚しさ、愚かさを強調していますね。
エンターテイメントとするならば、あの知力で戦う戦術に一つ一つにスポットをもっとあてて欲しかった思うけれど、
革離の墨家としての使命に疑問を持ち始める内面を描いた作品とするならばこの「墨攻」はとても内面を丁寧に描いたいい作品だと思います。
NoTitle
日本の漫画が海外で注目されるケースが増えたとはいえ、「墨攻」の映画化は、ある意味前代未聞ではないでしょうか。中国史に埋もれた知られざる存在、墨家にスポットを当てた壮大なストーリーから惹かれますね。革離への信頼と妬み、武人たちの誇りと意地が入り乱れ、戦争の空しさが浮彫りにされてましたね。これほど本気で、エンターテイメントと反戦のメッセージを両立させた力作も珍しいです。スクリーンから溢れ出す真摯な男を感じました。
見ましたかー
コブタさーん、こんにちわー。
TB&コメントありがとうございましたー。
そうか、コブタさんは原作を読んでいたのですね!私は未読ですけど、この作品で原作を先に読んでいると、かなり物足りなかったのではないかしら。私は、イメージしていたものとは違っていたので、ちょっと残念な感想でした。
アンディ・ラウも良かったけれど、アン・ソンギが素晴らしかったと思いました。吹替えではなく、ご自分で中国語を操っているんですよね。努力を絶やさないところも素晴らしい~。