一ヶ月フリーパスチケットつかって観られる映画はすべて観るぞキャンペーン第11弾は「硫黄島からの手紙」です。
こちらは ご存じクリント・イーストウッド監督の硫黄島二部作の第二部となる映画で 今回は日本人側からの硫黄島での戦いを描いた作品です。
そのため ハリウッド映画に関わらず、日本人役者による日本語による台詞とかなり異色なものとなっています。
日本人からみて、日本兵の姿などにやや違和感を感じる所はあるものの、この作品をアメリカ人が制作したということが、「硫黄島からの手紙」がもっとも意味あることのように感じました。
戦争は悪化の一途を辿り、本土防衛の最後の砦となる硫黄島を死守することを命じられ島に降り立った指揮官栗林中将(渡辺謙)、そして妊娠中の妻を残して出征することになった若い兵士西郷(二宮和也)、ロサンゼルスオリンピックで金メダルを取った経験のある西中佐らの目を通して、みた硫黄島での戦いを描いた物語です。
武器もそれほどなく、援軍も臨めない状況で 一日でも長く戦うために準備を進める栗林中将、それを陰ながら支えようとする西中尉、セオリー無視の奇策を提案してくる栗林中将に反感を抱き、あくまでも日本兵として埃をもって玉砕することをモットーにしている伊藤中尉(中村獅童)、憲兵出身で軍国主義にすっかり染まっていたものの戦争の中で自分の信じてきたものが崩れていくことに戸惑いを覚えていく清水(加瀬亮)らが、戦闘の中で、様々なことを想い、そして行動していくという物語、凄く丁寧に作られていて、役者陣もそれぞれいい演技をしていたと思います。
しかしコブタは映画の宣伝に使われている観客のように泣くことはできませんでした。
クリント・イーストウッド監督の意図や考えが前面に出すぎていて、そちらのほうを感じ取り納得するというほうに意識がいってしまい、それぞれの登場人物に感情移入するというところまで回らなかった状況というべきなのでしょうか。
また 感情的にではなくあえてクールな視点でそれそれを描くという形をとっていたので、観客もそれを静かに見届け、そして落ちついて太平洋戦争とは何だったのだろうかと考えさせてくれたように感じます。
たしかに無惨な戦闘の様子を描かれているのですが、それ以上にそれぞれの想いをもって、まず生きて帰らないという硫黄島の戦いに参加した日本兵の姿を、兵士としてより人間として描こくことをより意識して作られています。
島での出来事そして戦いの様子と同時に、とフラッシュバックで兵士としてではない彼らの過去の姿を描き、それらが アメリカの人がみてより、あのとき闘った相手は自分たちと同じようにそれぞれの愛する妻や子供がいる人間なんだよというのを分かり易くす描いていたように感じます。
そのため戦争下で異様な心理状況にあった日本で育ったというわりに違和感もあり、若い兵士らには特に現代的な若者っぽさを感じないわけではなかったのですが、その分かり易い兵士たちの人間的な部分が、自分たちとまったく変わらない同じ人間同士が戦うという姿をみせることで、戦争の愚かさを描いたクリント・イーストウッド監督の意図は強く感じました。
そして、この作品、、アメリカ捕虜も治療したりする日本人兵を描く一方、捕虜を殺したり、日本兵の武器を戦利品のように奪って喜ぶアメリカ兵など、アメリカ側を必要以上に悪く描いているところも注目すべき所だと思います。
この作品、戦争を体験した日本の人たちへというより。戦争を知らない私達や、他国に兵を派遣し戦争を繰り返しているアメリカの人たち、そういう人たちが見るべき映画な感じがしました。
今だからこそ 見るべき映画そう思います。
評価 ★★★☆☆
監督 クリント・イーストウッド
出演 渡辺謙
二宮和也
伊原剛志
加瀬亮
中村獅童
裕木奈江


この記事に対するコメント
ノラネコさんへ
反戦っていままでいろんな描き方もあったのですが、それをこういう形で描いたセンスが凄いですよね。
扇情的にもしがちの内容にかかわらず、クールな視点にし、観客も感情的にではなく考える余裕を与えるそのさじ加減も計算しているのでしょうね。
硫黄島からの イーストウッドからの 手紙 この映画の中で届けられましたね(^^)
こんばんは
>戦争を知らない私達や、他国に兵を派遣し戦争を繰り返しているアメリカの人たち、そういう人たちが見るべき映画
その通りだと思います。
「父親たちの星条旗」からイーストウッドのスタンスは一貫しています。
彼は、硫黄島に眠る日米の兵士たちの目線をかりて、現在の我々に重い問いかけをしたのだと思います。
この作品を観た全ての人々に、硫黄島からの手紙は届いた事でしょう。
aiさんへ 隣の評論家さんへ
aiさんへ
この作品、泣いたといった感想も多かっただけに、コブタは涙もながさずむしろ冷めた視点で戦争についての思いを馳せてしまい、人とのズレに同様していたのですが、そのように言ってくださって嬉しいです。
二宮くんの演技がもてはやされていますが、やはり私は大人でグローバルな視点をもっていながらもあの戦闘に加わらないといけない栗林中将を演じた渡辺さんはやはり凄いなと思ってしまいました。
やはり クリント・イーストウッドは凄いです
隣の評論家さんへ
コメントありがとうございます!
煽情的、感情的に戦争を描く作品が多い中で これはかなり異質な作品でしたよね。
それだけに、監督の訴えたいことが、静かに伝わってきたように感じます。
どうもー
コブタさん、こんにちわー
TB&コメントありがとうございました。
実は、私も。1場面に一筋の涙が流れてしまったくらいで、《泣ける映画》という印象は受けませんでしたわ。それでも、忘れられない強烈なシーンがたくさんあって、どちらかと言うと驚愕して固まって見てました。
お正月映画で再度見るんだったら、この作品かな。いえ、観には行けませんけどね。
これは感動作では無いと思うんです
あたしもこの作品を観て泣く事はありませんでした。泣かせようとしている作品ではないですね。
泣かなかったけれどすごく胸に重く響きました。
そう・・泣いて欲しいんじゃなく、感じて欲しい、監督はそう意図したんではないかと思います。
今でいう普通の青年が、戦争の波に飲まれ、恐れながらも国の為に命を捨てる。
「父親たちの星条旗」がそうであったように、
アメリカも日本も多くの若者を犠牲にして今がある事を・・・その時の人々はこんな想いで戦っていたんだよと伝える事ことこそが
監督がこの映画作った理由だと想います。
個人的にはとても胸に染みる作品で
好きな作品です。