Date:2006/09/29 18:08
ヴィゴ・モーテンセンのファンということもあって、公開当時から興味があり原作を読んで予習までしたのに劇場で観そこなってしまった作品です。
アメリカ・インディアナ州の田舎町で小さなダイナーを経営するトム・ストールは、妻のエディや2人の子どもとともに、平凡で平和な生活を送っていました。彼が経営するダイナーに強盗がはいり彼は店員と客を守るために抵抗し強盗を倒します。トムは一躍町のヒーローとなりますが、そのことによって彼の意外な過去が彼の生活に陰を落としていくという物語で、暴力という形のない悪意と人間との関係を描いた作品です。
かなり衝撃的な要素を含む原作、鬼才デイヴィッド・クローネンバーグ 監督作品ということで、直視できない映像が出てくるかもしれない!!と覚悟していたのですが、思ったよりも映像的にはコブタが固まるほどのものはなかったのです。
しかし、銃によって打たれた傷跡がとてつもなくリアルに描けれていたり、ショットガンで撃たれた死体から飛び散った肉片が胸におちてくるといった、同じ男女の相反する意味をもつセックスシーンなどクローネンバーグ 監督らしい拘りとささやかなえげつなさをもった映像でした。
そのえげつなさが、この映画のテーマにうまく絡み思わず見入ってしまう作品に仕上がっていました。
また ヴィゴ・モーテンセンの演技が素晴らしく、複雑な過去をもった男を見事に演じています。おだやかで良き夫、良き父親、良き町民であるトムであるときの表情、暴力的好意を行っているときのジョーイの時の表情がまったく違っており、またぞれが一人の人間であることが違和感なく表現しています。
原作とは異なり、過去の姿を映像として描いていないのですが、彼の演技だけでジョーイという人物がどういう過去を生きたのかを観客に感じさせる迫力と身のこなしをしていました。
トムが切り捨てた暴力にまみれた過去、その過去は完全に切り離せるものなのか、またその過去を知った家族は彼を受け入れられるのか、と一見一人の男の生き様を描いた映画なのですが、アメリカ自身が抱えている狂気 暴力性を浮き彫りにしているようにも思えました。
評価 ★★★★☆
監督 デイヴィッド・クローネンバーグ
出演 ヴィゴ・モーテンセン
マリア・ベロ
エド・ハリス
ウィリアム・ハート
この記事に対するコメント
隣の評論家さんへ ai さんへ ノラネコさんへ
隣の評論家さんへ
最近 秋も深まってきたためか、お化粧とTBのノリがよくなってきて嬉しいです!
原作ですが 過去ギャングで(原作は小物のチンピラですが)の男が、平和に暮らしていたところ強盗退治してヒーローになり、そおれによって追ってがやってくるいう物語が同じですが、過去どのような事をして組織に追われ、エド・ハリス演じるあの方とどのような攻防があったかも描かれているんですよね。
ただ、、絵に深みがないのとコマ割りが淡々としているので、読みづらい漫画だなという印象のほうが強かったりします(^▽^;
映画のほうがシンプルにまとまってて見やすいですよ~
ai さんへ
この作品 評価が割れるのもわかる感じがします。ai さんの気持ちも理解できます。
このクローネンバーグらしい表現世界を楽しめるか人は評価があがり、違和感を感じてしまう人には評価が低くなるんだと思います。
現在 バイオレンスといった表現がどんどん過激に派手になっていくなかで、こういう表現をしたことに流石だな~と思ってコブタはこういう評価になったんです。
ノラネコさんへ
原作に人体切断シーンなどもあることもあり、かなり過激さを覚悟しながらドキドキ緊張して観ていただけに、表現がかなり抑え気味になっていることに驚いてしまいましたが、細かいところでリアルさを追求していたところは流石、、クローネンバーグ監督と思ってしまいました。
TBどうもです
描写的にはずいぶん大人しくなった感があるクローネンバーグですが、暴力という物の本質を、一つの家族に投影するという構造は見事。
ストレートなんですが、深みがあります。
円熟ですね。
偶然にも
同じ日にレビューUPでした(^-^)
観たかったのにリリースからだいぶ時間が経ってからの観賞になってしまいました。
だいぶ映画通の方の評価が高いんですよね。
なのであたしもこれは必見と思っていたのです。
ただあたしの鑑賞能力がまだまだ乏しいせいか、この作品を全面的に良かったとは思えませんでした。
暴力シーンはなかなか見せ場でグロテスクな映像もこの作品では必要だったと思えます。
ただし途中のわけのわからない抱擁と言い、後半ボスと対峙するまでのトムの心情が、こうグッと伝わってくるものが無かったのです。
いろいろ含ませて終わるスタイルは結構好みなものの、本作では共感できないまま終わってしまったのです。
同じように良い評価をつけてのコメントが出来ず
失礼と思いつつも、これも感じ手の違いと受け止めていただけたらと幸いです。
最近TB快調で何より!
コブタさーーーん!TB&コメントをありがとうございます。
何と、原作を読んだのですねー。映画よりもずーっと引っ張った作品なのでしょうか。映画は、想像していたよりもサッパリしていた印象を受けました。クローネンバーグ監督っていうからには、ビチャグチャとエグイ映像が出てくるものだとばかり思っていたので。
本作にてウィリアム・ハートがアカデミー賞助演男優賞にノミネートされましたが。アタクシ的には、エド・ハリスの不気味な佇まいと威圧的な雰囲気に清き一票でござんした。
ラストの家族で食卓を囲むシーンは、インパクトがありましたね。短いけれど、とても深いシーンだったと思いました。