観るというより映画の中に流れるなんとも切ない空気を感じるそんな作品でした。
日韓融合映画というと 少し前に『非夢』という映画がありました。
コチラはキム・ギドク監督でオダギリジョーがイ・ナヨン と競演したファンタジー映画。
韓国を舞台の作品でしたが面白いことに、韓国俳優みな韓国語で会話しているのにオダギリジョーだけは普通に日本語でしゃべっていて、当たり前のように日本語と韓国語での対話が成り立っているという手法をとっていました。
物語が夢がテーマだっただけに、その不思議なやりとりがまたいい味を出していて、映画をより非現実で謎めいたものとしていました。
コチラの作品は 韓国の女優ペ・ドゥナな日本語の台詞で役に挑んでいるのですが、感情をもつことにより言葉を覚え始めた人形の役だけに、独特なイントネーションが 日本語に不思議な魅力を与え詩的な印象深い世界を作り出しています。
【ストーリー】レトロなアパートで秀雄(板尾創路)と暮らす空気人形(ペ・ドゥナ)に、ある日思いがけずに心が宿ってしまう。人形は持ち主が仕事に出かけるといそいそと身支度を整え、一人で街歩きを楽しむようになる。やがて彼女はレンタルビデオ店で働く純一(ARATA)にひそかな恋心を抱き、自分も彼と同じ店でアルバイトをすることに決めるが……。(シネマトゥディ)
この映画を見終わったあとに、ふと頭に浮かんだのは加納朋子さんの小説『スペース』スペースはミステリーの小説で コチラはファンタジージャンルも物語もまったく異なるのですが、どちらも形のないスペースを表現して描いている作品。
小説の『スペース』は 人と人との間に出来てしまっている空間を感じながら、自分がいるべき場所を必死で求めている人物を描いた物語で、コチラの映画は、それぞれの心の中に出来てしまった空虚な感情を描いた物語。
この映画の主人公は、空気人形で、身体の中にあるものは空気のみで、彼女はそれを何もない『空っぽ』と表現しています。
でも 彼女の中に何もないのではなくて、空気が入っていてそれはこの映画の中で重要な要素になっているもの。
一見何の力もない空気も動けば風となって、ペットボトルの風車を回し、それぞれの登場人物の身体をなでていくもの。
そして空気人形の中にある空気も単なる気体ではなく、秀雄の部屋の中に満ちた気体であり、純一の呼気であったりと実は彼女にとっても深い意味をもったものなんですよね。
それによって、はじめは無彩色の服を着ていた空気人形が、だんだん色をもった服を身にまとい彼女の心に色を添えていく、その様子が観ていていじらしく愛おしいさを覚えてしまいます。

空気人形のあまりにも純粋過ぎるまっすぐな一途さが可愛らしいだけに、普通のラブシーン以上にエロいシーンもすんなり心に入ってきて この切なすぎる物語見入ってしまいます。
観て心の中で何かが弾けるという感動ではなくて、心の中にじわ~と広がって蓄積され残っていくそんな作品です。
注 加納朋子著の『スペース』は、実は女子大生駒子シリーズの三作目にあたる作品。
この作品を読まれる場合は、『ななつのこ』『魔法飛行』を読まれたほうがいいです。
というか せめて『ななつのこ』だけは読んでからにしてください。
【オオブタさんの一言】色々考えさせられる内容ではあるけど、中盤がやや長いかな?
一見無情に見える板尾の気持ちもなんか分るな。
意外すぎるラストには驚かされた。
このラストも含めて この作品常に前の台詞をうまく次のシーンへで生かしているところがまた面白かった。

評価 ★★★★☆
監督・脚本・編集・プロデューサー: 是枝裕和
原作: 業田良家
企画: 安田匡裕
プロデューサー: 浦谷年良
ペ・ドゥナ
ARATA
板尾創路
高橋昌也
余貴美子
岩松了
星野真里
丸山智己
奈良木未羽
柄本佑
寺島進
オダギリジョー
富司純子
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この記事に対するコメント
ノラネコさんへ
[コブタ]
コメントありがとうございます
最近邦画でガッカリされっぱなしだっただけに、コチラの作品を観て嬉しかったです。
私はあのラストも含めて、この作品にすっかり魅せられてしまいました。
一見残酷な物語ですが、だからこそ 感情や心というのが深く表現されていたと思うんですよね~
>しかし、この映画をご夫婦でご覧になると、何となく男の性が生々しすぎて、気まずくなりませんか?>オオブタさん(笑
[オオブタ] たしかにね~かなりぶっちゃげてますよね!
でも カップルならともかく夫婦同士だとまたぶっちゃげられるところもあるので 大丈夫でした!
是枝監督の作品は未だにハズレと思った事がないのですが、これもまた見事な作品でした。
ぺ・ドゥナをキャスティングした時点で勝ったような作品ですけど、心を巡るなんとも切なくて愛しい作品になりました。
テーマもストーリーも色々と解釈できるので、賛否両論になりそうな気もしますけどね。
う~ん、是枝監督の映画ならタダでも良いから参加したいですね。
しかし、この映画をご夫婦でご覧になると、何となく男の性が生々しすぎて、気まずくなりませんか?>オオブタさん(笑