私の父は団塊の世代生まれで、偏屈というよりかなり癖のある人物。
なので娘ながらその距離感に未だに悩んでいるところのあったりします。
頑固なくせに気分屋で、いつも家族を振り回してきている父、、。
この映画の主人公のウォルトの姿を見ているとタイプは違うものの父とダブる部分が多く、それだけに主人公ウォルトが遠い存在に感じられず見入ってしまいました、、。
そんな私の個人的な感情は置いといて いろんな意味でイーストウッドに痺れた!そんな作品でした!
【ストーリー】妻に先立たれ、息子たちとも疎遠な元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合う。やがて二人の間に芽生えた友情は、それぞれの人生を大きく変えていく。(シネマトゥディ)
気のせいでしょうか??
イーストウッド、作品を重ねる度ごとに映画の精度が上がってきているのは。
シンプルにストレートに物語を見せ付ける!そんな映画でした。
とにかくいろんな意味でバランスもよく、うならざるえない上手さを感じました。
時代遅れの偏屈な男が、人との交流で心を開いていきそしてその仲間となった人の為に戦うという物語自身はよくあるもの、でも人物やアイテムそれぞれにしっかりとした意味をもたせ深みを与え惹きつけるものにしているところにイーストウッドの才能を感じてしまいました!
主人公が愛蔵しピッカピッカに磨き上げているグラントリノという車はアメ車が全盛の時代に販売された高級車。
古き良き時代の象徴であり、良い意味でも悪い意味でもアメリカ自身がパワーをもっていた時代に作られた流麗なデザインで人気のあり『アメリカの魂』とまで称せられる車なそうです。
今の時代からみるとリッター1.5キロメートルと燃費はわるくV8エンジン搭載で、排ガス規制にも引っかかってしまうような地球への優しさはない車で、人種差別の塊で古きアメリカの保守的な価値観で頑なまでに生きているウォルトそのもの!
愛する妻を失い、息子とも疎遠となってしまって、ごく少ない友人とのみとの関係しかもたない孤高な男ウォルトが、モン族の一家との交流によって家族以上の絆を深めていいくのですが、その交流の様子がなんともいえなくいいんです!
あざとく感動ものに盛り上げるのでもなく、むしろ笑いのある暖かさのある内容で静かに穏やかに見る人を引き込んでいきます。
家族というものを失ってしまっている男と、父親不在の姉弟がお互いに足りないものを補いあいささやかな幸せの姿を築く一方、それに影を落とす存在のギャング達、ソレに対するウォルトの行動というのも、今までのハリウッド映画にありがちな形をあえて取らなかったこともこの映画の質を上げているように感じました。
現在の、暴力に対して暴力では何も解決しないという風潮をうけてのことだとは思いますが、彼がそういう行動をとったことに対しても、過去の戦争経験、そしてウォルトのおこした暴力的行為が最悪の事態を引き起こすことになるなど、しっかりと納得のいく説明がされていることで見る側も受け入れる事が出来きます。
また、ウォルトという人物を描くことで、アメリカが抱える犯罪・暴力・民族などの問題を浮かび上がらせ、それらから本来人を守るべき司法・宗教という立場がどういうものなのかまでも表現した上で結末を描いているので、ウォルトの行動が他のハリウッド映画のタフガイとは異なるリアルな重さをもたせているように感じました。
、、とか、色々
理屈をこねて語りましたが、、これはそんな理屈ぬきに面白い映画です!
ただ、現在アメリカでも日本でもいなくなってたポリシーを貫いて生きていく骨太男性の格好よさを堪能するそれに限るのかもしれません。
【オオブタさんの一言】本年度みた映画で ベスト1の映画!
やや あざといと思える所はあるものの、面白すぎる!格好よすぎる!


評価 ★★★★★

監督・製作 クリント・イーストウッド
製作 ロバート・ロレンツ / ビル・ガーバー
製作総指揮 ジェネット・カーン / ティム・ムーア / ブルース・バーマン
原案 デヴィッド・ジョハンソン
原案・脚本 ニック・シェンク
出演 クリント・イーストウッド
ビー・ヴァン
アーニー・ハー
クリストファー・カリー
コリー・ハードリクト
ブライアン・ヘイリー
ブライアン・ホウ
ジェラルディン・ヒューズ
ジョン・キャロル・リンチ

この記事に対するコメント
ノラネコさんへ
コメントありがようございます
本当に素晴らしいの一言でしたよね!
イーストウッド ここにあり!!という感じがしました!
年を重ねるごとに円熟していく、、表現者として幸せですよね!
78歳、、私は、、そこまで生きているかどうかも、、謎です、、(。。
こんばんは
気のせいではないでしょうね。
圧倒的に見事な作品でした。
私も今年の作品ではベスト1ですね。
こんなにもシンプルでわかりやすい映画で、こんなにも深く広いテーマを描き切るというのは、もうなんというか参ったとしか言いようが無いです。
円熟というのはこういう事を言うのでしょうね。
自分が78になったとき、こういう境地に達していたいものです。
マサルさんへ 、二純さんへ
マサルさん
本当にこれは いろんな人に自身をもってお勧めできるというか、、見て欲しい作品ですよね!
強さとやさしさって 映画において意外に両立しにくく、強さを出すと独りよがりな感じになるものですが、コレは見事にマッチングさせているとこも素晴らしいと思ってしまいました。
二純さん
お久しぶりです!コメント嬉しいです!
コチラの作品、イーストウッド自身の意思が伝わってくる作品でしたよね。
アメリカが行ってきた正義、ハリウッド的な正義それらにたいしてのコレがそれのように感じました!
本当に素晴らしい映画の一言です!
いろんなテーマが重層に描かれてますよね。今のアメリカを映し出す暴力、家族問題から人種問題など???
コワルスキーが可愛いがっている車にさまざまな意味を込められていて、それが面白い。
9.11以後のいわれなき暴力に対するイーストウッドなりの答えがこの映画にあります。
彼の信じる「アメリカの正義」とはこういう事なのではないでしょうか?
良い映画ですよね。
こんばんはー。
私もラスト(に至るまでの過程もそうなんだけれど)でウォルトの強さと優しさにシビレました。「人はここまで強くなれるのか」と。そして自分とウォルトを比較するとなんだか絶望的にすらなってしまったりも...。
いずれにせよ、みんなに観てもらいたい作品ですね!